腸管出血性大腸菌O157のワクチン候補株の作製に成功
大学院医学系研究科細菌学講座の平川 秀忠准教授らの研究グループ(富田 治芳教授)は、同研究科生体防御学講座の鈴江 一友講師との共同研究により、腸管出血性大腸菌O157のワクチン候補株の作製に成功しましたので、お知らせします。
本研究成果により、腸管出血性大腸菌O157の感染症予防や治療法の発展に繋がることが期待されます。
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業および、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 新興?再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(20fk0108061j0003) による支援を受けて行われました。
本件のポイント
- 腸管出血性大腸菌 O157 は、Tol/Pal システムと呼ばれる蛋白質を産生しますが、本研究では、Tol/Pal システムを産生できない変異型 O157(以下、変異型 O157)は、ほとんど病原性を示さないということを発見しました。
- 変異型 O157 は、3型分泌蛋白質と呼ばれる病原性蛋白質の分泌不全を起こしており、ヒトの上皮細胞に対する傷害性が顕著に低下していました。
- O157感染症の代替モデルであるシトロバクター菌を用いてマウスに対する病原性を評価したところ、Tol/Pal システムを産生できない変異型シトロバクター菌は、マウス内で腸炎や下痢を起こさず、致死性も示さないことを明らかにしました。
- 一方で、変異型シトロバクターを感染させたマウスでは、防御免疫に最も重要な Th17細胞の活性化が観察されました。
以上の結果から、Tol/Pal システムは、腸管出血性大腸菌 O157 感染症に対する有力な治療標的分子であること、また変異型 O157 は、ワクチンの有力候補になりうることが示唆されます。
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本件に関するお問合せ先
(研究について)
群馬大学 大学院医学系研究科細菌学講座
准教授 平川 秀忠
(取材対応窓口)
群馬大学 昭和地区事務部 総務課 広報係
TEL:027-220-7895
FAX:027-220-7720
E-MAIL:m-koho*ml.gunma-u.ac.jp
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